
一見、単純そうなこの絵からは、複雑な感情が生まれてきます。
それはある問題を解決しようとして出てきたものだと思います。
果物と赤、青の色面、なぜこのような組み合わせが出てきたのでしょうか。
実は色面は敷き布なのですが、四角い敷き布を一番その通りに表現するために、ここでは上から見て並べたように表現しています。
なぜならその方法が一番端的に四角いものを四角に表現できるからです。
ところが単純な形はそれ自体で完結し易いので、画面の中で敷き布を演じるよりも、色や形として、絵の中での純粋な要素としてのウエイトが大きくなってしまうのです。
一方、果物も極めて単純な形ですが緑色のへたがサインとなって、現実の物だとわかります。
結果的に現実の果物と絵の要素としての色面が共存するアンバランスがこの絵を複雑で興味深いものにし、少し濁った色彩がそれを増幅させます。
また画面を囲むような緑や流動的な筆致が統一感をあたえます。
このように様々なバランス・アンバランスによって合理的に割り切れない不思議さが生まれます。
それは、見たものをどう2次元に表現するかと言う問題を、遠近法とは別のやり方で解決しようという試みからでてくるのだと思います。
テーマ:色彩 - ジャンル:学問・文化・芸術